確かに無理に走らせた。でも、こんな風になるほど琴葉は体力がないわけではない。成夜の知る琴葉は成夜の全力疾走に合わせても10分はついてこれるはずだった。

そんな琴葉がたかだか5分…いや、それ以下で膝をついてしまう理由が思い付かなかった。

いや、そんなことを考えている場合ではない。琴葉を抱えてでも連れて帰らなければ。

目的を思い出した成夜だが、その首筋に冷たいものが突きつけられる。

「その手を離せ」

息を乱しながらナイフを突き付ける暁は、成夜の腕の中で意識を失っている琴葉の顔を見て顔を歪める。

自分の意思で動けない琴葉があんな全力疾走に着いていけるはずがない。意識が飛ぶのも無理はないだろう。

今すぐにでも安静に…いや、一度医師に見せるべきだ。

合流してきた奏多と奏太が背後についたのを見て、暁は再び成夜を睨む。

成夜もまた、琴葉を抱き寄せ暁たちを睨み付けている。