季龍に背を向けて、成夜に手を引かれた琴葉は走り去っていく。

1人その背を季龍は呆然と見つめていた。

「何やってんだよバカ!!早く追いかけろ!!」

季龍を引き戻したのは罵声と、同時に走った背中の痛み。

我に返った季龍が見たのは、走り去る琴葉たちを追う暁や奏多たちの背と、自分を叱咤した信洋の焦った顔。

ヤバイ。

頭をよぎったのはそんな言葉だけ。

だが、走り出すのに必要な判断はそれで十分だった。

あっという間に信洋に並んだ季龍は、路地に入り込んだ琴葉たちの背を認めるなり口を開く。

「平沢に駅に通じる道を塞がせろ!お前は防犯カメラの映像から見張れ。逃がすなよ!」

「了解!」

季龍の言葉に信洋は足の向きを180度反転させる。

その背を見送ることなく季龍もまた、琴葉たちが消えた路地へ足を踏み入れた。