「…な、る……や?」

聴こえてきた声にすべての音が掻き消える。

ずっと、待ち望んでいた声。最後に聞いたのはもう1年も前だ。

記憶にこびりついていたはずの声は、日を増すごとに霞んでいって、あぁ琴音はこんな声をしていただと頭の隅でのんきに判断する。

…どうして、今なんだ。

…なんで、今なんだよ。琴音…。

突然現れた内藤成夜を見つめる琴音の表情には、明らかに動揺が走っていて。さっきまで無表情だったのが嘘のようだった。

目を大きく見開き、どうしてと顔に書いているように見えるほどはっきりした感情の表れに、状況も忘れてただただ琴音の姿を見つめていた。

季龍side end