ショッピングモールを出て、駅の方向へ歩いて行く。

琴音の様子に変化はない。でも、これから買いに行く物のせいか、妙に浮ついた気持ちでいた。

琴音の手を引くながら歩いて行く。少しずつ暗くなっていくにつれて明らかに男女が連れ添って歩いて行く人数が増えていく。

1歩後ろを歩く琴音に視線を向ける。

…お前に意志が出せたなら、お前はどんな顔をしてたんだろうな。

前を向く。反応なんか見なくても、大体予想がつくだろ。笑みを浮かべ、また1歩前に踏み出そうとした時、ふと引っ張られたような感覚に足が止まる。

琴音…?振り返った時、琴音の手を掴んでいたのは俺だけじゃなかった。

坊主に近い長さの黒髪の男だ。片膝に手をつくほど息を乱しているのにも関わらず、琴音の手首を離そうとしないそいつは、大きく息を吸うと顔を上げる。

「…やっと、見つけた」

男が見つめるのは琴音だけ。他の状況などまるで目にも入っていないようだった。

…知ってる。俺は、こいつを写真で見たことがある。

琴音の幼馴染であり、琴音の1番近くにいた男。確か、名前は…。