「んじゃ、俺たちは分かれて見てるから。若、ここちゃんとデートいってらっしゃーい」

「は?」

信洋の軽口に頭が追い付かねぇまま、走り出した車。

…嘘だろ。危ねぇんじゃなかったのか…?

まさかの状況にしばらく身体は動かず、ただ呆然と立ち去った車の消えた先を見てることしかできなかった。

しばらくして、信洋たちにからかわれたかんじゃないかとありそうな考えにたどり着いた途端、怒りが沸いてくる。

あの野郎、バカ真面目な顔して、結局考えてんのはいつもと変わんねぇのか。

大きくため息をこぼし、琴音に視線を向ける。

表情は変わらない。手を握ると、わずかに握り返されたような気がした。

「…行くぞ」

からかわれたとしても、これは琴音に感情を取り戻されるためにすることに変わりはない。

とにかく、適当に歩いてみるか。

俺が歩き出せば、琴音も着いてくる。それを確認して、前を向いた。