「暁、奏多と奏太に声かけてこい」

「ッ…いいんすか?」

「あぁ。…琴音が元に戻るための手伝いくらい、やらせてくれ」

「ッはい!」

嬉しそうに、そんな言葉が似合うような顔で暁は駆け出していく。

琴音に視線を戻すと、いつの間にか視線は俺に向いていた。琴音の頬に触れる。表情は変わらねぇ。

「琴音、行くぞ」

「…」

返事はない。それでも、手を引けば琴音は付いてくる。

どれだけ琴音が歩けるのかは分からねぇ。それでも、ここまで動けるんだ。外に連れ出すのだって、きっといい刺激になる。

僅かに見えた希望に縋りつくことしかできねぇ。それでも、これ以上、琴音の隣を歩くことに恥を感じないためにも、出来ることはやってやりたい。

琴音の肩を抱く。琴音の歩調に合せて進みながら屋敷の中に戻った。