わからねぇ。でも、琴音がわずかに表に出す意思に少なからず安心した。

「…琴音は若のこと、気にしてると思います」

口を開いた暁は琴音の手を引いて屋敷の中に入れる。

「いつもはぼんやりしてるのに、若の名前出すといつの間にかこっち見てるんです。さっきだって、平沢さんのこと止めたのは偶然じゃないです」

暁の言葉に目を見開く。

偶然じゃない。そう断言する暁は琴音のことを分かっているようだった。

いや、分かっていて当然だろう。暁はずっと琴音を見ていたんだ。分からないわけがないだろう。

傍にいなかった分がそのまま琴音の理解に繋がっている。

琴音のことが理解できていないことに罪悪感を抱えずにはいられなかった。

「…琴音は、若が傷つくのを嫌がってると思うんすよ」

「…俺は、琴音にそう思われる資格もねぇよ」

「若がそう思ってても、琴音はそう思ってないっすよ」