…あの日、季龍さんと決別したあの日から10年。私の予想通り、季龍さんと再会することはなかった。

あれから私は地元へ戻り、退院したお父さんと共に暮らし始めた。高校は3年生から成夜と同じ高校へ編入した。

元通りの、ううん、憧れていた普通の高校生活だった。髪が白いことや、事件の被害者であることから、初めは距離を置かれていたものの、そんなのは初めのうちだけで、すぐに打ち解けた。

順風満帆、高校生活は終わりを告げ、大学へ進学した私に想定外だったのは、葉月琴音として通っていた高校の同級生、麻夏くんとの再会だった。

これには向こうも驚いた様子だったけど、無事な姿に安心したと彼は笑った。私のなかでは貴重な大学の友人となり、4年間を共に過ごした。

というのも、大学時代、私はずっと嫌みたらしいある男性につけまとわれ、彼によって人との交流を遮断されていたせいでもある。

その話はいいとして…。卒業後は、これまでの使用人としての知識を生かしてホテル業に従事した。勝手はいろいろ違ったものの、役立つことも多く、天職だったのではないかと自画自賛してみたりした。