遅かったぁ…。

背後からため息が2人分聞こえてくる。

へ、蛇に睨まれた蛙になった気分です。

『…お前なぁ』

『ひっ!?』

喉から変な声出た!!

季龍さんに伸ばされた手を避けることも拒むことも出来ず、大人しく捕まった。

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そんなわけで、今朝お布団を抜け出してからというもの、絶頂に機嫌の悪い季龍さんはひと言も口を利いてくれない。

お父さんの病院に向かってる車の中は殺伐とした空気が流れていて、いつもはおちょくってくる信洋さんでさえ運転に集中してしまっている。

季龍さんになんて言えば…。

チラッと見上げると、視線が重なって思わず瞬きする。あれ、こっち見てる?