そんなわけで朝ごはんの支度のため、泣く泣く季龍さんの腕から抜け出して台所に立ってると言うわけです。

目の前に立った奏太さんは、両手を私の肩に乗せる。その顔は妙に真剣だ。

『あのな、お姫様。腕の中にだーいじに仕舞ってたお姫様がさ、朝起きたらいなくなってるわけよ。どんだけ焦るか分かる?』

『う…』

『それに、若だってさぁ。朝起きてお姫様にキスの1つや2つしたいって思うわけよ。…若がどんだけ落胆するか、分かる?』

奏太さんの言葉にだんだん、自分がとんでもないことをしてしまったんじゃないかって思えてくる。

…戻った方がいいかな?……戻った方がいいよね!?

『ほら、若が起きちゃう前に部屋戻って寝たふり!』

『っは、はい!』

ビシッと廊下を指差されて思わずいい返事をする。

そうと決まれば、とっとと戻る!!くるっと体の向きを変えて少し急ぎ足。と、台所ののれんを潜ったところで何かにぶつかって足を止める。

…嫌な予感。

恐る恐る顔を上げると、おっそろしく静かな顔をしている季龍さんと視線が重なる。