「そうか」

微笑んだ季龍さんは私から手を離していく。

風に揺れた髪が頬や口にかかって、髪を耳にかけた。

お互いになにも話さない。ただ、繋いだ手が、触れている肩が熱い。

急に緊張してきて、なにか話題はないかと必死に考え始める。これくらいの沈黙平気だったくせに、妙に落ち着かない。

「そ、そういえば、誕生日一緒だったんでしゅね」

取って付けたような言葉は、何故か噛んでしまう。季龍さんは一瞬目を丸くしたけど、フッと微笑む。

「あぁ。クリスマス生まれが俺以外にもいたのは初めてだよ」

「私もです。小さい頃、みんなに誕生日とクリスマスは一緒なの?ってよく聞かれました」

「どうだった?」

「うーん、ほぼ一緒でした。でも、お父さんなぜかホールケーキ2つ買ってくるんですよ?お父さんと2人だけなのに、食べるの大変でした」

「食い意地、張ってたんじゃねぇの?」

「んな!?そんなことないです!」

「でも食べてたんだろ、ホールケーキ」

言い返せる言葉がなくなって、季龍さんを睨む。勝ち誇ったような顔をされただけだったけど。