『若・琴音ちゃん 誕生日おめでとう!!!』

広間の1番目立つところに掲げられた横断幕。

そこに並んでいる名前は、季龍さんと私。

あれ、今日って季龍さんの誕生日会じゃなかったっけ?

「やられたな」

「え?」

「俺は、お前の誕生日会をやるって聞いてたんだよ」

季龍さんの言葉に一瞬反応が遅れる。

それって、初めから全部仕組まれてた?

背中から誰かに抱きつかれる。振り返って見えた顔に思わず表情が綻んだ。

「だいせいこ~!!」

「梨々香ちゃん、策士だね」

「全部お前が考えたのか?」

梨々香ちゃんの頭を撫でようとした手が、季龍さんと重なる。その手を重ねたまま、梨々香ちゃんの頭を撫でる。

梨々香ちゃんの表情は今までに見たどんな表情よりもうれしそうに見えた。

「さてと、主役は座った座った!今日は無礼講だ~!」

「お前が言うことかよ」

信洋さんがビールを掲げて叫ぶのを、季龍さんが呆れた声でくぎを刺す。だけど、その雰囲気に水を差したわけではなく、宴会は始まった。