「琴音、準備は任せろ」
「お姫様、ファイト!」
「琴音さん、頼みました!!」
挙句の果てに応援される始末…。
みんな勝手だよぉ…。自分でも青ざめてくるのがわかる。
連れて来られてしまった玄関で、梨々香ちゃんはようやく離れる。
体を離すとか、そんなレベルじゃなくてその場から逃げだしていくかのような勢いで離れていく。
「ことねぇ!18時30分までお兄ちゃん広間に近づけちゃだめだからね!」
「ッ梨々香ちゃん!?」
「若お戻りになられました」
脱兎のごとく引き返していった梨々香ちゃんを呼び止める間もなく、玄関先から威勢のいい声が響く。ほぼ同時に車のドアが開く音がする。
背中に冷や汗が伝っていくのが何となくわかる。
…どうやって引き止める?というより、私は季龍さんの傍に置いておいてもらえるのかな?
さまざまな予測が頭を巡る。表情が硬くなっていくのを感じながらも、ドア越しに見えた人影に緊張がマックスになった。


