「って、それならここもやばくね?」
「「あ…」」
奏太さんの言う通り。台所の中はパーティー料理であふれ返ってる。これらをすべて冷蔵庫に隠すのは無理だ。
それに、そもそも廊下を片付けたところで季龍さんが広間や台所に足を踏み入れた時点でアウト。
でも、季龍さんの動きを制限させるなんて、そんなことできるのかな…。
サプライズに暗雲が立ち込めるのを嫌でも感じる。
どうするべきか考えていると、ドタバタとにぎやかな足音が聞こえてきて顔を上げる。
すると、準備途中だったのか、飾り付けの風船を持った梨々香ちゃんが飛び出してきた。
「ッことねぇ!!お兄ちゃんのお出迎えして!!」
「え?」
「ことねぇにしか頼めないの!お願い、お兄ちゃんの気引いてて!!」
梨々香ちゃんの気迫に思わず後ずさる。
私が季龍さんの気を引く?あと2時間くらい…?
無理。
浮かんだ答えは一瞬で、首を大きく横に振る。私が季龍さんの行動を制限する?そんなことできるわけないッ!!
拒否しているのに、梨々香ちゃんは構わずぐいぐいと私の背を押して玄関に連れて行こうとする。
暁くんや組員さんたちに助けを求める視線を送っても、視線を逸らされて無視される。
う、裏切られた…。
肩を落としている最中でも、梨々香ちゃんの足は止まることなく玄関へ向かう。


