「琴音、味見」

「え?…暁くん、もう必要ないと思うよ?」

小皿を差し出してくる暁くんに首をかしげる。

私が意識不明で眠っている間ずっと台所は暁くんと奏太さんの2人でやっていたと聞いた。

私も目が覚めてからやっていなくて、今日久しぶりに台所に入った。つまり、1年以上2人でご飯を作っていたということになる。

それならもう、私が味見なんてする必要ないような…?

「お姫様の味と俺らじゃ違うよ?せっかくお姫様が入ったんなら、お姫様の味にしたいじゃん?」

「そんなものですか?」

「早くしろ。濃くなる」

暁くんに促されて小皿を受けとる。

もう少しだけお砂糖を入れてもらって、かき混ぜていた大鍋の火を切った。

「奏太さん、そのお姫様っていつまでそう呼ぶんですか?」

「んー?だってお姫様はお姫様でしょ」

「私はただの使用人です」

「若の寵愛受けてる人はお姫様でしょー?」

「琴音って呼べばいいだろ」

暁くんも疑問だったのか、私に加勢してくれる。

すると、奏太さんは困ったように頭をかいた。