沈黙が落ちる。平沢さんを見ると、なぜか険しい表情をしていた。
…私、変なこと言ったかな?不安になって情けない顔になるのが何となくわかる。平沢さんは大きくため息をつくと、膝を立てた。
「あのなぁ、琴音。お前、まぁだそんな殻ん中にいんのか?」
「え?殻…ですか?」
「自覚すらねぇのか」
平沢さんの言う通り、何のことを言われているのかさっぱりわからない。
答えを求めるように平沢さんを見ると少しだけ悲しそうな目をされた気がした。
「それがお前の枷なのかもしれねぇな」
…枷?
縛られてるって、こと?その表現は自然と不安を呼ぶ。
「何回も言ってるだろう。お前は家族だ。永塚組に来たその時からずっと、お前は永塚の一員で、俺たちの家族だ。…どうして同じ家族の一員が、自分の生きる道を決める権利がないんだ?」
何度も言われたこと。言われているのに心のどこかで納得できなくて、勝手に否定し続けている言葉。
家族だって、言ってくれる。それは嬉しいはずなのに、どうしたらいいのか分からなくて、そこから逃げようとしていた。


