自分の記憶が誤っていないことを再確認して、平沢さんを見るけど、不敵に微笑むだけで、答えてくれる気は全くないらしい…。

「お嬢、琴音少し借りるぞ」

「えぇ…」

梨々香ちゃんは納得していないような声を出したものの、止める気はないのかそれ以上何も言わなかった。

平沢さんに手招きされる。梨々香ちゃんと手を振って別れ、平沢さんの後に続く。

廊下を少し歩き、空いている部屋の襖を開けた平沢さんは、その室内で腰は下ろさず、雨戸を空けて縁側に出る。

そこでようやく腰を落とした平沢さんの隣に腰掛ける。

だいぶ肌寒い。…平沢さんの傷に触らないかな。そんな心配をしている真っ最中に、平沢さんは懐から煙草を取り出した。

「ッ怪我人が何吸おうとしてるんですか!?」

「うお!?これぐらいかすり傷だ。いいから寄越せ」

「ダメです!!ただでさえ体に悪いのに、こんな時くらい禁煙してください!!」

思わず平沢さんの手から煙草とライターをふんだくる。手を伸ばしてくるけど、煙草は背後に隠す。

本当なら、まだ入院していないといけないはずなのに。いくらなんでも見逃せない。

平沢さんと睨み合い、我慢比べのような時間が続く。やがて、ため息をついた平沢さんは両手を上げてひらひらさせる。