だからと言って文句ばかりは言っていられない。

俺がやると決めたことだ。俺がやらなければいけない。

移動中に資料をめくるのも、もう日課だ。

資料をめくっていると、何かが足元に落ちる。それを拾い上げた時、周囲の音が消える。

笑った琴音が写っていた。

いつも周りに振り撒いていた、あの優しい顔だった。

『若、最近どうかしたんですか?』

先ほどの奏多の言葉を思いだす。

どうかしたかと言われて当然だ。俺はもう、琴音の顔をまともにみる時間すら空けることなく仕事をしていた。

片時も目を離さないようにしていたはずなのに…。いつの間にか、琴音の様子を見ることもなくなっていた。