季龍さんに起こされると、行きに乗ってきた駅に着く前だった。

手を引かれて新幹線を降り、電車を乗り換えて最寄りの駅までたどり着く。

駅のロータリーに出ると、まるで連絡を受けていたかのように、見覚えのある高級車が停まっていることに気がついた。

当然のように、運転席から現れた信洋さんは、見たこともないような真剣な目で近付いてくる。

「おかえり」

「…」

「もう勝手は許されないことくらい、分かってるよな?」

信洋さんの言動は、季龍さんに選択肢なんて与えていない。

立場が逆転している。まるで、わがままな弟をたしなめる兄のような態度だ。

季龍さんはなにも言わず、私の手を引いたまま車に近づいていく。後を付いてくる信洋さんは、私たちが車に乗り込むのをわざわざ確認して運転席に乗り込んだ。