「季龍さんこっちの部屋ですよ?」

「…お前の部屋はな」

「え?」

季龍さんは手にしていたカギを使って、709室のドアを開ける。

呆然としてる私を置いて季龍さんは部屋の中に入っていく。

「夜はルームサービスを使え。朝になるまで部屋から出るなよ」

「え、季龍さ…」

手を伸ばしたけど、呼び止める間もなく部屋の中に入って行ってしまった。

行き場を失った手は力なく下がり、しばらく呆然とその場に立ちすくんでしまった。

…部屋から出るなって、言ってたよね。ここで立ってちゃだめだよね。

手に持ったままの708室のカギに視線を落とす。

もう一度、季龍さんの入っていったドアを見つめ、与えられた部屋に移動した。