…まるで、絵を見ているようだった。
微動だにしない。ただ、ぼんやりと虚空を見つめる女性は、まるでそこだけ時を切り取られているかのように動かなかった。
いや、動けないのかな…。
まるで、人形のようにも見えるその人は、私たちの存在にすら気づいていないように、ただ虚空を見つめていた。
「…おふくろ。な、なんで…」
「ッ季龍さん」
少しずつ足を前に進めていく季龍さんを止めようとしたけど、伸ばした手はわずかに届かなくて。指先が服をかすめていく。
ベッドに座る女性の前で足を止めた。その姿は、幼い子どものまま。
季龍さんが目の前に立っても、女性は彼を見ようとしない。
「おふくろ」
「…」
「…俺だ。…あんたの息子の、関原季龍だ」
「…」
「忘れちまったのか?…なぁ、おふくろ」
一方通行の言葉は、彼女に届くことすらないの?
季龍さんがどれだけ訴えかけても、女性は季龍さんに見向きもしない。まるで、聴こえてすらいないように…。


