改札を抜け、駅の外に出る。そのままタクシー乗り場に向かい、今度こそタクシーに乗り込んだ。
距離はそれなりにあったけど、さっきとは比べ物にならない。
季龍さんは構わずタクシーを走らせる。街中から、だんだんと店が少なくなって、家が少なくなって行き、家と家の間隔が開いていく。
そうしてついに山道を走るタクシーに、どこへ向かっているのか、本当に目的地に向かっているのか不安になる。
…でも、その不安はすぐに解消されることになった。
不意に山道は途切れ、大きな病院が姿を見せる。
大きな病院に、広大な庭。…でも、その敷地は金網のフェンスに囲まれている。
まるで、入院患者を隔離しているかのように…。
「ここ、何の病院なんですか」
「この辺で1番大きい精神科病院ですよ。こんな山奥にあるから、お見舞いに来る人も、そうそういないです」
呟いたひと言は、タクシーの運転手さんに丁寧に返される。
精神科病院…。そんなところに、何があるっていうんだろう…。
そんな疑問をよそに、タクシーは病院のエントランス前に止まる。
クレジットカードで料金を支払うと、タクシーはまた山道を下っていく。それを見送ったところで季龍さんは声を出す。


