「…とね、琴音」
「ッ…」
あ、あれ寝てた?
外を見ても景色がどれだけ変わっているのかはよくわからなかったけど、新幹線に乗っている人の多さに時間の経過を感じる。
身支度を整える季龍さんにならって、食べ終えていたサンドイッチのごみを片付けて、少し残っていた飲み物を飲み干した。
そうしてすぐに到着した駅で降りると、もうお昼になりかけていて、今朝出てきたときは比べられないほどの人にあふれていた。
「はぐれるなよ」
「はい」
差し出された手に手を重ねる。
初めて来る駅に気を取られている余裕があったのは、季龍さんの手が離れることはないって確信があったからだ。


