朝ごはんを食べ終えると、途端にやることがなくなってしまう。
季龍さんも同じようで、つまらなさそうに外を見つめていた。
「…あの、セントラルネイチャー病院って、なんですか?」
「…親父の、…俺の、血のつながった親父の、最期の言葉だ」
想像外の言葉に思わず目を見開く。
季龍さんのお父さん、関原隆治さんの遺言って、こと?
そんな大切なものに私を連れて来たの…?他の誰でもなく、私を…?
少しプレッシャーを感じて息が詰まる。
それに気づかれたのか、軽くうつむいた頭を撫でるように手を置かれた。
「お前だから連れてきたんだ。お前がいなかったら、俺は1人で来た」
ゆっくり手が離れていく。季龍さんは苦笑して目を閉じる。
…季龍さんも、怖いんだ。
父親が最期に残した言葉。それが病院の名前。
何が待っているのかわからない。そこに誰かいるのか、何かあるのか、何もわからないから…。
外の景色に視線を向ける。流れていく景色を見つめる。この先に何があるのか、何が待っているのか、何もわからない。
少しずつ近づいてくる目的地がどんな場所なのか、考えても出ない答えを考えることしかできなかった。


