季龍さんは何も言わなかったけど、それを口にするのはきっと気恥ずかしいんだろうって察しがつく。

季龍さんの体に少しだけ身を預けると、さらに抱き締められた。

「あ~。ゲフンゲフン…俺たちも帰ろ?」

わざとらしい咳払いは信洋さんのもので、今の状況にハッとする。奏多さんと暁くんは少し視線をそらしていて、平沢さんは少し機嫌が悪いようにタバコを吸っている。

慌てて離れようとすると、舌打ちが聞こえてきて逃げないようにきつく抱きしめられた。

「ッ季龍さん!」

「あ?」

ふ、不機嫌そうな声を出したってムダですっ!!早く離して!!

必死にもがいていると、舌打ちと共に解放された。ほっと息をつく間もなく、耳元で感じた吐息に体は硬直する。