「琴葉。……お前は、幸せになれ」

旦那様の、……いや。叔父からのひと言に頷くと、彼は今度こそここを立ち去る決意を固めたようだ。

「お母様、正裕、行こう」

「えぇ。…源さん、ありがとう。琴葉ちゃん、また近いうちにお話しましょうね」

「はい!」

おばあ様はふふっと笑みを深めると、旦那様に車イスを押されていく。正裕は何か言いたげな顔をしたものの、ただ頭を下げただけで、何も言わずに父と祖母の後を追った。

永塚の人だけになった瞬間、場の空気が緩んだのを感じる。

肩を下ろす信洋さん、のんきにタバコをふかしはじめる平沢さん、やっと自然な笑みを浮かべた暁くん、奏多さん。みんなの表情はとても柔らかい。

「琴音」

肩から手が離れ、背後から抱き締められる。その温もりに抵抗することなく、季龍さんの腕の中に収まった。