「あー、華江様すみません。もう1回お願いできます?入力されなかったみたいで」
「構いませんよ」
緊迫した空気を壊した信洋さんは、ロックが解除されていないパソコンの画面を指差しながら、おばあ様にマイクを差し出した。
それを快く受け取ろうとおばあ様が手を伸ばしたとき、3つの影が同時に動く。
「往生際が悪いと思いますよ」
「黙って見てろ糞が」
「ッぐ……」
華江様を狙おうとしたのか、陣之内総一郎の手には銀色の光を反射するナイフが握られていた。
でも、彼の凶事を一瞬で防いだ奏多さんと暁くんの前に為す術を失ったようだ。
それを読んでいたように、信洋さんに焦りは全く見られない。そして、マイクを受け取った華江様は、軽く息をつく。
「琴葉」
一瞬の間の後、パソコンの画面にcompleteと表示された直後、膨大なファイルが表示されていく。


