「さーてと。開けていきますか」

パソコンの前で軽く準備体操をする信洋さんは、楽しそうに口角をあげたまま。

そんな様子を見ている私と季龍さんだけ。

いつか見た青い画面。この画面の先に源之助さんが求める情報がある…。

「ここちゃん。パスワードはことはで間違いないんだね」

「はい。確かにそう聞きました」

「よし」

信洋さんはパソコンの前に座り、キーボードに手を添える。

あっという間に“ことは”と打ち込まれた画面。そして、エンターキーが押された瞬間、響いたのはエラー音だ。

「え?」

「驚くことじゃないよ。ここちゃんは確かにパスワードを聞いた。でも、見てはないでしょ?だから“ことは”がどんな文字で入力されてるのかは分からない」

「そういうものですか?」

「当然。まぁ、想定してたから。手当たり次第に打ってくね」

そう、不敵に微笑んだ信洋さんの目の色が変わった。