―客観視―

晴天の言葉がこれほど似合う空はあるだろうかと考えてしまうくらい、雲1つない空。

そんな空を見上げていた陣之内 正裕は大きく息をついた。

「どうなってるんだよ…」

彼は混乱していた。

そう言うのも、先日のパーティーで顔を会わせた、元使用人の宮内琴葉…いや、葉月琴音と名乗っていた少女との婚約が成立したと祖父から連絡があったのだ。

もちろん、正裕自身にその意思はない。

だが、巨大財閥の跡取りとして婚約者すらも自分の意志で決められないと知っている。

だからと言って、なぜ葉月琴音なのか。

あの時、あれほど自分を拒否した彼女が自分との婚約を承諾するわけがない。それに、自分を傷つけた上に不幸に陥れた相手を、結婚相手に選ぶ理由が分からない。