…こんな奴を傷つけようとする奴らがいる。

それを思い出しただけで奴らを殺したくなる。琴音を傷つける奴を、傷つけた奴を…。

「季龍、さん?」

「…琴音、言え」

「何をですか?」

「…お前を傷つける奴を、全員消してくれと」

スッと、琴音の顔から表情が抜ける。

一度うつむいたあと、顔をあげた琴音は笑みを浮かべていた。

「言えません」

「…」

「言いたくないです」

困ったように目尻を下げる琴音に呆気に取られていたが、我に返った途端沸いたのは怒りだった。

琴音の両肩を持ち、視線を重ねる。それでも、動揺を見せないその目に焦りさえ浮かぶ。

「お前を殺そうとしてる奴らだぞ!そんな奴らにまでどうして!!」

「違います」

「違わねぇだろ!偽善か?そんなもんなら…」

「違います!!」

琴音から出た大声に、言葉が詰まる。

その間にも違うと繰り返す琴音は、俺の手を両手で包むと、大事そうに抱き寄せられた。