琴音の手首を掴んで引き寄せる。

あっさり腕の中に入ってきた琴音を肩にかけられた毛布で包む。

「お前の方が湯冷めすんだろ」

「…お風呂入ったので大丈夫です」

「だから湯冷めって言ってんだろ」

琴音は首を傾げ、へにゃっと音がつくような笑みを浮かべる。

そんな顔にさっきまでのイラつきが静まっていくのが分かる。毒気が抜かれていくような感覚に、心が安らいでいくようだった。

「季龍さん、甘酒飲みます?」

「甘酒?」

「作ったんですよ。平沢さんに全部飲まれちゃいます」

「おっさん連中が好きそうだな」

離れていこうとする琴音の背に腕を回す。キョトンとした顔を向けられたが、素直に体を預けてくる。

いなくならないと言われているようで、少しだけ気恥ずかしい…。