季龍side

口から勝手に出たため息に、もう何度目だと呆れる。

昼間、田部が琴音に話した内容に関わった奴ら全員殺してやりたいと思った。

琴音が命を狙われる理由も、琴音の家族があの家に囚われていた理由も、何もかもただ奴らのエゴに過ぎないものだった。

そんなものに巻き込まれて、命さえ狙われる。そんな理不尽の中で生きてきた琴音を、さらに苦しめようとする奴らにどうしようもない憤りと殺意以外沸かなかった。

ただ、この件は親父が自ら指揮を執っているせいで、ほぼ何も出来ないと言ってもいい。ただ傍にいて、外野で起こるものを見ることしかできない状況に苛立ちは募るだけだ。

「季龍さん」

「ッ…」

かけられた声に一瞬体が揺れる。

直後に肩にかけられた毛布に振り返るが、琴音はすぐに真正面に回ってきて笑っていた。

「体、冷えますよ」

「…」

微笑む琴音の頬は僅かに高揚して、少しだけ湿っぽい髪は軽く結われていた。