「そうじゃないのに、そう思っちゃう」

「…」

「ことねぇも同じだよね」

そう微笑む梨々香ちゃんは、まるで知らない人を見ているようだった。

子どもで、自分の気持ちにまっすぐで、少しだけ大人ぶっている。そんな梨々香ちゃんじゃなかった。

「…でもさ、それもダメなんだよね。私がいなくなったら、お兄ちゃんはお兄ちゃんじゃなかった。それに、私がいなくなったらきっとお兄ちゃんはもっともっと傷つくかもしれない。私は、私を大事にしないと、私を大事にしてくれる人を傷つけちゃうから」

痛い。耳が、心が、ズキズキ音を立ててやめてって叫び始める。

それでも、梨々香ちゃんを止められないのは、それが正しいって思ってるから…?

「ことねぇ。私は、ことねぇのこと大好きだから言うね。…ことねぇのせいじゃない。私は、ことねぇを傷つける人を許したくない。だから、戦ってほしい。ことねぇを傷つけようとする人たちに負けてほしくない!」

握られた手は熱くて、火傷をしてしまいそうだった。