踏み込んだ会場に思わず目を見張る。

きらびやかな衣装に身を包んだ人々はまるで人形のように。仮面を貼り付けたような笑顔で向かい合う人々は操り人形のように。

まるで人の意思を感じない人々の集まりはあまりにも気持ちが悪かった。

「仮面舞踏会みたい」

思わず呟いた言葉の直後、隣から笑う声が聞こえて見上げると季龍さんが顔を背けていた。

「笑わないでくださいよ」

「お前が笑わせるのが悪い」

「思ったこと、言っただけです」

視線が重なる。少しだけ緊張がほぐれて素直に笑うことができた。

…で、何をすればいいんだろう?

周りを見ても特に気になる人はいない。というより、着飾りすぎてて例え知ってる人がいても分からない気がする。

「琴音、来い」

季龍さんに手を引かれるままに歩き出す。…何となく、何となくだけど視線が向けられてるような気もした。