その日は智香に半ば引きずられるようにして帰った

『ただいまー...』
と言っても返事をする人は誰もいないのだが帰ってくると言ってしまう言葉だ。

うちは母子家庭で私と母と兄の三人暮らしだ。父は事故で亡くなっている。だがシングルマザーの母は仕事をしておらず、母の両親などに頼ってお金をやりくりしていた。私はそんな母が嫌いだった。

とりあえず自分の部屋に行こうと階段を上ると母の部屋から見知らぬ男性の声がする。
そういえば玄関に靴あったかも...?と思いながら、うるさくしてはいけないと思い静かに自室に移動した。

部屋で適当にゲームなどをして時間を潰していたが飽きたのでベッドに寝転がった。ふと母と男性の会話が気になったので壁に耳を当ててみると、どうやら出かけた先で知り合った人らしく趣味の話などをしていた。

母は私たち兄妹を育児放棄していたので、働かないで遊ぶことだけをしているということに子どもながら最低な母だと思っていた。