｢先輩、お待たせしました。｣

待ち合わせ場所に着くと私服姿の先輩が私の姿に気づき手を振ってくれた。

そんな先輩の所へと駆けつけると先輩はしばらく私の姿を見る。

｢浴衣姿の千春ちゃんも可愛いね。｣

そんなことを戸惑うこともなくサラリという先輩に大人の余裕を感じつつも先輩の隣に並び大会場へと向かう。

こういう時、佑唯くんならきっと恥ずかしがりながら遠回しに褒めてくれるんだろうなぁ〜…。

なんて先輩とのデート中なのに佑唯くんのことを考えている自分に罪悪感を抱きながら暗くなりかけの道を二人並んで歩いた。

**

｢もうすぐ花火始まるって。｣

辺りはもうとっくのとおに真っ暗で先輩がスマホをいじりながら言うように花火がもう打ち上がってもおかしくないくらいだった。

そのせいか会場の人の多さは私と先輩が会場についた頃の二、三倍ぐらい増えていて道を歩くのもやっとだった。

けど、そんな時…、

｢千春ちゃん、大丈夫？｣

人混みに埋もれそうな私を先輩が心配して手を引こうとしたその瞬間…、

私の視界の端には私がずっと会いたかった、

｢佑唯くん…｣

がいた。