｢なーに、うなだれてんだよ千春。｣

顔を突っ伏してから数分、ウトウト眠りにつきかけていた私はその声に一気に遠ざかりかけていた意識を現実へと戻す。

｢あっ、えと…問題が解けなくて…｣

声は佑唯くんので数冊の本を手に隣の椅子に乗っていた自分の荷物を背もたれにかけるとその椅子に座った。

姿勢を元に戻した私は、隣に座った佑唯くんとの近さに緊張しながらも、またワークへと向き直るとワークは私の目の前からスっとスライドし隣の佑唯くんの方へと寄せられた。

｢どこ？｣

｢…え？｣

｢分からないとこ、あるんだろ？｣

｢うっうん…。ここなんだけど…｣

私が指したのは左側に座る佑唯くんからは少し遠い自分側のページの問題で佑唯くんがその問題を見るためにグイッて身を乗り出したことにより佑唯くんの肩がコツン…と自然に私の肩に当たる…。

｢これは…、この公式に当てはめると出来るやつな？逆に下のは、この公式。使い分け方とかまた教科書で確かめておくといいよ。｣

そう言って綺麗な字で、私のワークへと公式を書き込むと一気に距離は離れ佑唯くんは持ってきた本を開きながら1冊のノートに何かをメモり始めた。

耳元に残る佑唯くんの吐息の音、距離が縮まった時に感じた温もりとかの余韻がまだ私の心拍数を不規則に早まらせた。