「聞いてたんですか…?」

後にいた冬本先輩に向き合い恐る恐る尋ねる私に、

「いや、その可愛いお友達さんが「好きじゃないの?」って言ったところからしか聞いてなかったからほとんど何の話してたか知らないよ。」

と女子先輩達に脅されたあの日からめったに顔を合わせなかった冬本先輩が首を振る。

そんな些細な姿でさえもかっこいい冬本先輩に「可愛い」と褒められた穂花は後ろで嬉しそうに顔を染めていて…けど。

「先輩何の用ですか?」

「あっ、今日クラス内で読み上げる時に使う資料を渡しに来たんだ。はい!千春ちゃん!」

「こういうのは、先生を通してくださいって…」

内心は穂花みたいに騒いではいられなかった…、

またどこかで女子先輩達に見られていたら…

そう思うだけで先輩へのあたりは強くなってしまう。

「んー、それも先生に頼んでたら俺が千春ちゃんに会えなくなっちゃうから…」

「委員会の時に会えるじゃないですか!」

「それじゃ少ないよ〜」

どんなに言っても本気で受け止めてくれない先輩に少しイライラして来た時…、

後ろで私の制服の袖を引っ張る穂花の行動に私は我に返る。

「千春…」

けど、穂花のその行動はどうやら私をなだめるための行動ではなかったらしい…。

「あっ、はいはい…。」

穂花の何かをねだる時のうるうるした瞳に私は仕方なく息をついた。