「はよっ。」

「おっおはよう!」

予想通り今日もホームでばったり会った私達は、当たり前かのように隣同士に並ぶ。

「あっあのっ!」

気持ちを決めて頑張って話を切り出せば綺麗な瞳が私を捉える…。

それだけでも、心はドキドキしてうるさい。

「…ん?」

彼は、いつも通り静かに落ち着いた様子で私のことを見つめている。

彼にとってはただの知人でしかもまだ実質は3回だけど相手は覚えてないのだから2回しか会ったことのない相手をもしかしたら自分から遊びに誘わなければいけないことに今さら緊張してきた。

そんな気持ちを押し込むように、

ースゥ…。

静かに口から息を吸って続ける。

「千条くんは、覚えているか分からない

けど…、私、3月の下旬に友達とのお出

かけで靴擦れしちゃって…その時に、

千条くんが応急処置してくれた時があ

るんだけど…覚えてるかな…」

ここまで伝えてもまだしっくりきていない様子の千条くんに少し悲しくなる。

けど、すぐに私は着ていたブレザーのポケットから使わずに毎日持ち歩いていた花柄の絆創膏を取り出すと彼の前へそれを突き出した。

それは初めて千条くんにたすけて貰った時に貰った絆創膏だ。

「じゃあっ!これっ、この絆創膏…覚え

てますか?」

「…、それ…」
そこでようやく何かを思い出したかのように千条くんは呟くと顎に手を当てしばらく固まってしまう。

も、すぐに「あぁ、あの時か…」と納得したようにつぶやくと「今は、髪縛ってたから気づかなかった…」そう言って優しくニコッと笑った。

今まで見てせくれたことのない笑顔に私の胸は自然に鼓動を早めた。