「…」

しばらく沈黙が続く中、彼のことをチラッと見つめた私は彼の横顔を見て相変わらずかっこいい人だな〜としみじみする。

その視線に気づいたのか彼はこっちを向くと「何?」と首をかしげた。

「あっいえ…。何でもないです。」

「ふーん。」

「…」

再び流れる沈黙に気まずさを感じ早く電車きて!!と願ってしまう。

「名前…、」

「…へ?」

ひたすらドキドキしていた私へと尋ねられたのか彼の言葉に今度は私が首を傾げると彼はまた、恥ずかしそうに、

「名前何ていうの?…俺は、千条 佑唯(チジョウユイ)。」

私に尋ね直してくれる。

あぁ、名前聞いてきてたんだ…。

彼の不器用さが少し可愛くて笑いそうになる。

「私は、坂口 千春です(サカグチチハル)。」

「坂口…千春…、なんかお前にピッタリだな。」

ピッタリ?褒めてるの?けなしてるの?

いや、彼のことだから多分けなすことはないと思いたい。

そんなことを考えているうちに電車はホームへと滑り込んできた。

今日も中は人でいっぱいで気が滅入る。

けど乗らないことには始まらない!

私が気持ちにそう喝を入れた…途端、

グイッ!

いきなり隣に立っていた彼=千条くんに腕を引っ張られて私は引きずられるように彼に続いて電車に飛び乗った。