コロン…

俺の胸ポケットからペンダントが落ちた。それは小さい白い薔薇のついたペンダント。

慌てて拾った時には遅かった。沙夜香はそのペンダントを不思議そうに見ていた。

昔の記憶をなぞる様に目をつぶって倒れた沙夜香。
後ろにいた誉が抱きとめたものの、沙夜香の足には力が入っていない。
苦しそうに頭を抑えてその場に崩れた。

「なにぼーっとしてんだ!侍医を呼べ!」

誉に言われて俺は部屋を飛び出した。広い屋敷の間取りは1日で頭に叩き込んだ。

(医務室は…この廊下の先だ。)

扉を開けて、中にいた初老の男性に駆け寄る。たしか、医務室の主人、柴田さんだ。

「柴田さん!沙夜香様が…!」

柴田は老眼鏡を外して、リビングまで来た。

「なぁに。いつもの発作じゃ。気にすることはない。」

柴田さんは沙夜香の脈をとってそう言うと、また医務室へ戻って行った。