「まさか、思い出したのか…?」

沙夜香が頷く前に、病室の扉がノックされた。
扉を開けて入ってきたのは…

「直樹…!」
「直樹さん…!」

誉も沙夜香も驚いた。しかし、すぐに誉は笑って扉の外に行った。

「俺はドクターに色々伝えてくるよ。」

「あ、誉さん!ちょっと!」

慌てておいかけようとしたが、1週間寝ていた身体がすぐに動くはずもなく、部屋には沙夜香と直樹だけが残された。

「ずっとお屋敷を留守にしてしまって申し訳ありませんでした。沙夜香様が病院にいらっしゃると聞いて…」

「やめて!」

直樹がまだ話している時に、沙夜香は目に涙を溜めてその話を遮った。

「もうその呼び方はやめて、久我直樹さん。直樹お兄ちゃんでしょ?」

直樹は目を見開いてその場に立ち尽くした。