はっと目が覚めた。真っ白で無機質な部屋の天井が目に飛び込む。

「今のは夢…?」

思考がついていけず、ゆっくりと起き上がった。

「沙夜香ちゃん…?」

隣には誉がいた。心配そうに顔を覗き込む誉に私は笑って見せた。

「私は大丈夫。だけど、私に何があったの?」

「大丈夫な訳ないだろう。誘拐だよ。ひどい傷で1週間も寝たきりだった。」

寝ていろ、とでも言うように布団を被せようとする誉に、沙夜香は慌てて尋ねた。

「ねぇ、直樹さんの苗字って何?」

「東槻。」

「そうじゃなくて!本当の苗字は…?」

誉は布団を被せていた手を止めて、沙夜香の目を見た。