学園から帰ってきた沙夜香は、倒れ込むようにベットに入った。

「沙夜香ちゃん、夕食は?」

部屋に入りながら尋ねた誉に沙夜香は寝返りを打ちながら答えた。

「いらない。」

「沙夜香ちゃん。直樹の事よりも、まずは自分の体調を整えないと。」

「…。」

「直樹の事なんか忘れてしまったら?多分あいつは帰ってこないよ。」

そう言われてから、どんな行動をしたのか全く覚えていない。ただ、気付いたら誉を閉め出していた自分がいて、そして不安になった。

小さい時からそうだった。自分勝手に行動して、周りを巻き込んで、皆に嫌われていく。
誰1人、沙夜香に親切にしてくれる人はいなかった。
専属を持った時は仲良くしたい、なんて簡単に出来ることじゃなかった。

自分に親切にしてくれるのは、“時枝”の肩書きばかり。“自分”の為じゃない。
全て偽りの優しさだったのだ。