「今日帰ったら色々調べてみるわ。」

ありがとう。と心無い返事をした沙夜香は迎えに来ていた誉の車に乗り込んだ。

「おかえりなさい。」

「ただいま。ところで誉さん。直樹さんってどうして研修に行くことにしたのかしら?」

なかなか帰ってこない直樹の事を誉に聞いてみる。

「うーん…。あいつ編入だったから、未学習の事をしっかり勉強したかったんじゃないか?」

そっか…と小さく呟いてから気になった。

「どうして直樹さんは編入だったの?冷泉学園ではよくある事なの?」

冷泉学園は代々執事として働く家の者のみが入学を許されるエリート校のはずだ。
そしてその大体は初等部からの入学と決まっていた。

「…ない。普通は有り得ない。」

信号で止まる車。
誉はハンドルを握っていた手を離して、小さくため息をついた。

「早く思い出してやれよ。」

その声はクラクションに消されて沙夜香には聞こえなかった。
いつの間にか信号は青に変わっている。
静かな沈黙のまま、車は屋敷まで走った。