誉の部屋を飛び出した沙夜香は、自分の部屋まで小走りで行った。

「彼が執事なわけない…」

自分が言った言葉にあからさまに傷ついていた誉を思い出す。
謝らなきゃいけないのに、うまく言葉に出来なかった。

でも、どうしてあんな冗談を…?
もしも冗談じゃなかったら、とも思った。

確かに茶色い髪という所は当てはまっている。だけど、あの病院に居たということは、どこかの財閥の令息に違いなかった。

でも。誉が、思い出せない彼の存在を知っていることは確かだった。

「きっと、パパに聞いたんだわ。」

半ば決めつけるように納得して、瑠璃子が持ってきた宿題の山を片付けるために机に座った。