直樹は、1日の沙夜香の様子を聞こうと、誉の部屋を訪れた。
ノックしようとすると、中から声が聞こえる。

『私のメモ見てたでしょう?これじゃいつまでたっても分からないままだって言ってた。誰だか知っているんでしょう?』

沙夜香様…?

何の話をしているのかすぐに分かって、直樹は扉の前で話を聞いていた。

誉は何と答えるのか。
ただ固唾を呑んで扉のむこうの会話に耳を傾けていた。

『私でございます。』

聞きなれない口調で誉が言った途端、すぐに乾いた音が響き、沙夜香もまた聞きなれない口調で叫んでいた。

『冗談はよしてちょうだい。彼が執事なわけないでしょう!』

その言葉を聞いた途端、直樹は自分の部屋に戻っていた。

「彼が執事なわけない…か。」

真っ暗な部屋の本棚から1冊のアルバムを出してきて、机の上のライトをつける。

「普通はそうなるよな。」

たくさんの写真を見ながら、直樹は小さい頃を思い出していた。