「とにかく、今日は学園も休みじゃな。1日様子を見てくれ。」

「…分かりました。」

柴田さんが帰った後、誉は直樹の部屋に行った。

ノックして、部屋に入る。

「直樹。」

ネクタイを締めていた直樹は誉に呼ばれて振り向いた。

「どうした?そろそろ学園の時間だろう?朝食の準備は出来たのか?」

誉は直樹の質問に答えることも無く、小さな声で吐き捨てた。

「沙夜香ちゃんが高熱出して部屋で倒れてた。」

目を見開いて驚き、部屋を出ていこうとする直樹。

「待て。」

誉はそれを止めた。

「原因は多分お前だ。」

低い声で言い放ち、既に扉の前にいた直樹の方を振り向いた。

「お前、何言ったんだよ。」

誉に言われて、直樹は椅子に座った。誉も続いて向かい側に座る。

「沙夜香…、いや、さやちゃんが結婚の約束覚えてた。」

直樹の言葉に誉は驚いたが、少し考えた。

「でも、それだけじゃ倒れたりしないだろう。」

「あぁ。俺がペンダントの事話したんだ。」

「どういう事だよ。」

「婚約者に貰ったペンダントだ、って。気づいて欲しくて。思い出して欲しくて。彼女にとって負担だってわかってた。でも…。
だから、それで少し思い出して倒れたのかもしれない。」

顔を鬱向けたまま直樹は呟いた。