「沙夜香、誕生日おめでとう。この2人がお前の専属候補だ。」

「はじめまして、沙夜香様。一ノ瀬 誉（いちのせ ほまれ）と申します。お見知り置きを。」

茶髪が特徴で、明るい雰囲気の誉さん。

「お誕生日おめでとうございます、沙夜香様。東槻 直樹（とうづき なおき）と申します。」

黒髪でメガネをかけた、落ち着いた雰囲気の直樹さん。

2人とも正反対な感じだけど、どちらもかっこよかった。
1人になんて決められそうにない。出来ることなら、2人とも専属につけたい。
そう思って沙夜香は、父に尋ねた。

「パパ、今すぐに決めなければなりませんか？」

「いいや、そんな事はない。ゆっくり決めたまえ。どうせそう言うと思っていたからな。」

考えてる事が見通されている気がして顔を赤らめると、父が沙夜香に1枚の紙を渡した。
開いてみると、この屋敷の権利書だった。

「この屋敷をお前に譲る。俺は仕事の都合で海外へ行くことになった。ここには信頼できる専属候補達と、たくさんのメイドがいる。その主は今日からお前だ。」

小さい頃に母親を亡くし、男手1つで育ててくれた父親と別れるのは悲しかったが、この屋敷を譲り受ける事はとても嬉しかった。

「はい、パパ。お仕事頑張ってくださいませ。」

パパは笑って荷物を持った。

「ありがとう。お前もな。」

誉と直樹と一緒に、沙夜香はパパが屋敷を出て行くのを見送った。