「史乃」 腕の中に愛おしい人がいる。 「史乃」 全然、足りなかった。 この一か月、忙しくてまともにデートもできなかった。 もっと一緒にいて、触れて、傍に居たい。 「彰人さん」 仕事中よりも甘えた声で、俺を呼ぶ。 そっと史乃の手が、背中を撫でていく。 「なにか、あったか?」 「…ほかの女の人に触られてるのを見ると、ざわざわします。」 俺の胸に顔をうずめながらボソボソと呟く史乃は、たぶん拗ねている。 昼休み前に来た先輩を思い出し、合点がいった。